お米づくりをしています
私たちがお米づくりをはじめた理由は、建築の設計にも通じる私たちの思いにつながります。
住まいや暮らしの根源になるもの、それは小さな循環によるべきだと思っています。国産材で家を建てることと同じように、私たちが口にするものは、この国でつくられるべきだと思います。豊かな国土に恵まれた私たちは、その土地で育まれた季節の産物をいただくことが、なによりの豊かさなのだと思います。遠くから搾取しない、身近な自然から得られる恵みで生きる。これは、建物にも食べ物にも通じる大事なことではないでしょうか。
林業も農業も、衰退の危機にある今日、そうあってはならない日本の重要な産業であるはずなのです。
お米づくりに関わるきっかけは、日頃仕事で付き合いのある材木店との関係からです。兵庫県豊岡市の山里で材木業を営みつつ、前代から引き継いでいる田んぼで稲作も兼業で行っているのですが、近年、生計を立てていくことの難しさや高齢化で、自らの田んぼを手放す人が相次いでいると聞かされていました。我々が農業に関心があることを伝えると、早速、休耕になっている田んぼ１反を我々のために借りてくれて、テイクスの農業事業がはじまったわけです。最低限の有機肥料で無農薬の米づくりをしました（田植えと稲刈りの他は、材木店の方に面倒を見てもらいました）。水のきれいな山里の源流域ということもあって、大変おいしいお米ができました。
＜てくてく米＞の名前の由来は、田んぼにやってくるいろんな動物の足跡や、田んぼの中で一緒に暮らしている生き物たちを見て、そんな彼らと一緒にてくてく育ったお米という意味と、テイクス米の意味を兼ね合わせたものです。
一方、こうして少し出資して米づくりに携わることで、稲作で生計を立てていくことの難しさ、そこから離れていく人たちが多い実情も実感することができました。林業と共に、国土の約73％を占めると言われている中山間地域での農業経営の難しさは、日本の大きな課題だと思います。消費者の意識も変わっていかなくてはいけないのだと強く感じさせられました。
稲刈りには、仕事でお世話になっている仲間も数名参加してくれました。今後も、田植えや稲刈りの体験ツアーを実施していきたいと思います。米づくりの楽しさと同時に、大事な何かを感じ取っていただける機会になればと思っています。