「おいしい空間・その3/隙間の利用」

「おいしい空間」シリーズの第3段は、隙間

の空間を有効利用する話しです。

ところで、壁の中はどうなっているかご存じ

でしょうか。昔の伝統建築は、柱に貫(地震

力に対抗する横通し部材)を通し竹木舞(土

壁を塗るための下地)を組んだ上に土壁を

塗っていました。なので壁の中はほとんど

土壁(これが断熱性能と調湿性能を持ってい

た)。つまり壁の中は詰まっていたのです。

現在行われている伝統工法以外のほとんど

の工法では、壁の中には筋交いと断熱材だけ

で、よく見ると意外とスカスカです。筋交い

の代わりに面材を外付けする工法にしたり、

荒板を外側から斜めに取り付ける工法にした

り、また、断熱の方法を内断熱から外断熱に代えたりすると、壁の中の利用できない隙間で

あった部分が有効利用できる空間に変わります。

柱が3面室内に現れてくることになるので、柱の奥行き分の棚を付ければ、12センチ角の

柱であればちょうど文庫本が納まります。もう一声棚の奥行きを広げれば、立派な本棚になり

ます。つまるところ、家中の壁という壁が本棚と化してしまう事が可能です。壁の厚み分が収

納に有効活用できることは、収納の悩

みのつきない現代住居にとっては喜ば

しい限りです。

また構造体の露出面が多いので、何か

問題が発生した場合にもすみやかに発

見し手を打つことができます。木の面

が多く現れているということは、それ

だけ木の呼吸を妨げずに済むので、ま

さに森林浴ならぬ木林浴の、おいしい

空間の家になります。

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