「おいしい空間・その2/変幻自在」

「おいしい空間」シリーズの第2段は、空間

を変幻自在に応用する術の話しです。

とはいっても、これは我々の先人が当たり前

のように暮らしの中で行っていたこと。

ちゃぶ台を囲んだ一家の食事も、布団を並べ

た畳の上の就寝も、同じ空間で行うことがで

きました。また襖の開閉によって、空間は

大きくも小さくもなったのです。このように部屋の用途も形も変幻自在に変化する様は、

硬い壁に囲まれた個室の概念しかなかった西洋人の目からは、新しい画期的な建築の姿として

写っていました。かつて西洋から羨望の眼差しを受けていたこのすぐれた知恵を、我々日本人

が積極的に活用しない手はないと思うのです。

私たちの設計では、床がフローリングでも、引き戸や襖をよく使います。壁に重なるように引

き込めば、邪魔にもならず、風通しもバッチリ。部屋も広く感じます。子供の成長に合わせ

て、共同部屋も、個室化するのも簡単。寝室の隣に子供室があれば、成長して家を出た後は、

引き戸を取り外して広々とした寝室にすることも可能。トイレも、引き違い戸(日頃は片側を

固定して利用)にしておけば、取り外すだけで介護のスペースが生まれます。車椅子で利用す

るときも、ドアよりずっと開け閉めが楽なのです。引き戸で間仕切る事により、一つの

スペースが、子供部屋になったり、寝室の一部になったり、廊下の一部が介護のスペースに

なったりと、なんどもいろいろに味わえる、おいしい空間に成ります。

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